東映スパイダーマン後のマーベル提携作品
東映が「スパイダーマン」終了後、続いてマーベル社と提携した作品には「バトルフィーバーJ」「電子戦隊デンジマン」「太陽戦隊サンバルカン」の三作品があります。
今回はこれらの作品がどのような形でマーベルと関わりをもっているのかを簡単にご紹介したいと思います。
■バトルフィーバーJ (1979年2月3日~1980年1月26日放送 全52話)
当初、「バトルフィーバーJ」はマーベルの人気キャラクター「キャプテン・アメリカ」をモチーフにした「キャプテン・ジャパン」という題名で企画が進みました。
しかし「キャプテン・アメリカ」のデザインその他はほとんど使われず、タイトルも日本的ではないと考えられ、当時流行語だった〝フィーバー〟を用い「バトルフィーバーJ」に変更されました。(『全怪獣怪人 上巻』参照)
唯一取り入れられたのが、マーベル社の前身であるタイムリーコミックス社時代に生まれた「ミス・アメリカ」というキャラクターです。 1944年刊行の『Miss America #1』と『Miss America #2』
バトルフィーバー隊の5人の胸にはこの「ミス・アメリカ」と同様のエンブレムが付けられ、紅一点のメンバーには「ミス・アメリカ」のネーミングがそのまま使用されました。
ミス・アメリカ (宇宙船別冊『SUPER GALS コレクション』より)
また「バトルフィーバーJ」のミス・アメリカは、1977年に個人誌創刊号が出版された「ミズ・マーベル」が元になっているという説もあります。
『Ms.Marvel #1』(1977年1月号)
ビジュアル的には、髪型、アイマスクがそっくりで、マフラーも付けています。時代的に考えても「ミズ・マーベル」は「バトルフィーバーJ」に近い時期に活躍したキャラなので、恐らくこちらの要素も充分参考にしているのは間違いないと思います。
ところで上記に「キャプテン・アメリカ」のデザインは取り入れられなかった、と書きましたが、実は「ミス・アメリカ」が誕生する3年前の1941年に「キャプテン・アメリカ」の第1号が出版されているのですが、この初登場時のキャプテン・アメリカのシールドの形は現在のように円形ではなく、下画像のような変型のものでした。
(1941年、Joe Simonによるコンセプト画 『The Marvel Vault A Museum In A Book』より)
「ミス・アメリカ」のエンブレムは恐らくこのキャップのシールドを参考にしていると思われます。
つまり「キャプテン・アメリカのシールド」→「ミス・アメリカのエンブレム」→「バトルフィーバーJのエンブレム」ということになり、「バトル~」のエンブレムの大元は結局はキャプだったのでは、という推測が成り立ちます。
ちなみに、これも推測の域をでませんが、キャップのシールドのオリジンは当時(1941年)の出版社、タイムリーコミックス社のロゴではないでしょうか?! 雰囲気がそっくりです。(但し一部にはキャップのシールドを模してのロゴマークという説もあり) 『Marvel Five Fabulous Decades Of The World's Greatest Comics』より
■電子戦隊デンジマン (1980年2月2日~1981年1月31日放送 全51話)
続いての「電子戦隊デンジマン」ではアメコミ風味にこだわらない作風を目指し、かろうじて悪側の「へドリアン女王」がマーベルキャラ、〝死の女神〟「ヘラ」のテイストを含んでいるのみです。(『東映ヒーローMAX #15』参照)
へドリアン女王(『スーパーヒロイン画報』より)とヘラ
ヘラは『Journey Into Mystery #102 』(1964年3月号) で初登場という、かなり古いキャラです。ノルウェーの神話を元にスタン・リーとジャック・カービーによって作られました。
ヘラのプロフィール詳細はコチラをご覧ください↓
http://www.marveldirectory.com/individuals/h/hela.htm
■太陽戦隊サンバルカン (1981年2月7日~1982年1月30日放送 全50話)
マーベル提携の最後の作品「太陽戦隊サンバルカン」にはマーベルのキャラをモチーフにしたものは何も登場していません。
唯一マーベルが絡んでいたのは超合金をはじめとする玩具など関連商品のマーチャンダイズ。商品には「M.C.G」(マーベル・コミックス・グループ)の表記があります。
当時発売されていた「消しゴム」のパッケージにも〝MCG〟の表記が。
関連商品に「M.C.G」の表記があるのは三作品共通です。
しかし番組オープニングの中に、スパイダーマンの時にはあった「マーベルコミックス版~より」の表示は勿論、「Marvel」のクレジットは一切入っていません。
ようするにスパイダーマン以外はマーベルと提携していたとはいえ後の三作品は、作風からキャラクターデザインに至るまでそのほとんどは日本オリジナルのテイストでまかなったことになります。
これはアメコミ・キャラが当時日本では受け入れ難いという判断が下された、非常に残念な結果といえるのかもしれません。