スパイダーマンが蜘蛛の怪物(=マンスパイダー)に変身してしまうエピソードは『Marvel Fanfare #1』(1982年3月号)【画像左】と『Marvel Fanfare #2』(1982年5月号)【画像右】で描かれています。
●MARVEL FANFARE #1
ターニャ・アンダーソンは行方不明になった幼馴染の恋人カール・ライコスを探し出す為に、ニューメキシコの山中で暮らすX-MENのメンバー、エンジェル(本名:ウォーレン・ワシングトン3世)の元へ向かった。
かつて若きカール・ライコスはチリの南にあるフエゴ島に旅に出た。そこで彼はサベッジランド(南極にある〝密林の王国〟)から飛んできた恐竜に噛まれ、生命エネルギーを他の生物から吸収しなければ生きていけない特異体質になってしまったのだ。そしてミュータントからエネルギーを過剰摂取したカールはソウロンという翼を持った恐竜のような生物に変身してしまった。
ターニャはソウロンになってしまったカールのことを忘れようとしたが忘れられなかった。
数年後、ターニャはある雑誌を見て驚愕する。サベッジランドの特集が組んであるその頁には、君主・ケイザーの傍に〝人間の姿〟をしたカールが立っている写真が掲載されていたのだ。
エンジェルに会ったターニャは一緒にサベッジランドへ行ってほしいと懇願する。
一方、デイリービューグルでは部数拡張の為の特ダネがほしいのか、ジェイムソンがサベッジランドへの取材に躍起になっている。そしてどうやらその危険な任務は、以前サベッジランドへ行ったことがあるピーター・パーカーが負うことになりそうだ。
かくしてピーター、エンジェル、ターニャの三人はアメリカ海軍のヘリに乗り合わせ、サベッジランドへと向かったのである。
ヘリがサベッジランドの上空に差し掛かると、突然プテラノドン(=空飛ぶ恐竜)の襲撃を受けた。ヘリは破壊されたがピーターたちはかろうじてサベッジランドに着陸した。
ホッとする間もなくピーターたちはミューテイツ(=かつてマグニートが原住民に遺伝子操作をして超能力を与えた者)たちに襲われた。ターニャだけは逃がすことが出来たが、ピーターとエンジェルはミューテイツの一人バーティゴの脳波を狂わす超能力により意識を失い、ついに捕らわれの身となってしまった。
スパイダーマンは意識を取り戻したが、すでにエンジェルと共に〝磔(はりつけ)状態〟で、身動きがとれず、さらにミューテイツを率いるブレインチャイルドが〝遺伝子還元装置〟なるマシンで彼らを実験台にするという。
このマシンはかつてマグニートがサベッジランドの原住民を遺伝子操作する時に使用したものだが、X-MENに破壊された為、ブレインチャイルドが修復&改良を加え、いくつかのオリジナル機能をさらに追加したもの。
このマシンはいかなる生物をもその〝原始の姿〟に戻してしまうのだという。
装置から繰り出される光線を浴び続けたスパイダーマンの意識は暗黒の世界へと引きずり込まれていく。そしてその暗闇の意識の中でスパイダーマンは〝おぞましい怪物の声〟を聞く。やがてスパイダーマンはその声が自分自身から発せられていることを認識するのであった。
●MARVEL FANFARE #2
ターニャが悪夢から目を覚ますと、そこには髭を蓄えた野性的な男が寄り添っていた。容姿は変われどその声を聞き、ターニャは男がカールであると即座に察した。
ピーターたちに逃がされたターニャはケイザーに救われ、カールの元に届けられていたのだ。
カールとターニャは抱擁しキスを交わし、二人の愛は相変わらず強いものだと再確認するのだった。
その夜、ターニャとカールがケイザー達から食事(ティラノサウルスのステーキ)の歓迎を受けていた時、またしてもミューテイツの一団が攻撃を仕掛けてきた。
地上から攻めるミューテイツに加え、空から「巨大な鳥」がカールを襲う。
ターニャは松明(たいまつ)の火明かりでわずかに見えた「巨大な鳥」が身に付けているボロボロのコスチュームに見覚えがある。
それはエンジェルのものだった。
ブレインチャイルドのあの装置でエンジェルは怪鳥に変身してしまったのだ。
一方ケイザーを八本腕の怪物が軽々と持ち上げ地面に叩きつける。
「オクトパスか?!」ケイザーは一瞬そう思ったが、それはエンジェル同様、スパイダーマンが変身した怪物マンスパイダーであった。
ケイザーの危機に牙トラザブーがマンスパイダーに飛び掛るが、マンスパイダーはあっさり払いのける。
そしてマスパイダーは再びケイザーに向かったのだが、何を思ったのか殺すのをためらいその場を去った。マンスパイダーにはわずかに人間の魂が残っていたようだ。
だが「怪鳥・エンジェル」はターニャをさらい、奇声と共に空高く飛んで行ってしまった。
ケイザーとカールはターニャを助けにブレインチャイルドの居城に乗り込む。
しかしターニャは一足違いで〝遺伝子還元装置〟にかけられてしまった。
カールはバーティゴの超能力で意識が朦朧(もうろう)となり、ケイザーはミューテイツ・4本腕のバーバラスと「怪鳥・エンジェル」の二人を相手に苦戦を強いられる。
マンスパイダーはその戦いをじっと傍観していたが、やがてケイザーを援助、バーバラスたちに立ち向かった。
悪の魂に侵食されつつもピーターの正義の意識は必死にそれと戦い、支配を免れたのだった。
マンスパイダーとバーバラス達はもみ合い、そして激しく遺伝子還元装置にぶつかった。装置は破壊された。
カールはネアンデルタール人に変わり果てたターニャを発見する。
遺伝子還元装置で与えられたエネルギーを吸収すれば彼女は正常になるかもしれないが、自分は再びソウロンに変身してしまう可能性がある。葛藤するカールであったがターニャを深く愛するカールは彼女に触れ、エネルギーを吸収しはじめた。ターニャは正常になったが逆にカールの身体は徐々に怪物に変化していく。
カールはさらにマンスパイダー、怪鳥エンジェルの邪悪なエネルギーをも吸収。ピーターたちは元の身体に戻ったが、大量のミュータントエネルギーを摂取したカールはとうとうソウロンに変身してしまった。ソウロンの中にはカールの自己はもう残っていない。おそらく再びカールに戻ることは出来ないだろう・・・。
「近い将来、俺はお前と戦うことになるだろう」ソウロンはケイザーにそう告げ、飛び去っていった。
ピーターとエンジェルがサベッジランドを去る日。
ターニャだけはここに留まるという。
カールを愛するターニャは願う。ソウロンが再びカールに戻ることを信じて・・・。もしくはソウロンのまま戦い死んでいくのか、その結末を見届けることがカールの自己犠牲により生かされている自分の役目だと・・・。
■補記1 マンスパイダーのフィギュア
マンスパイダーのベーシックフィギュアはリペイントを含めると3種リリースされています。左より、
スパイダーマン・アニメイテッド・ シリーズ6 (1996年)
ケイビー限定・MARVEL UNIVERSE(1997年) パッケージは異なりますが、フィギュアはアニメイテッドと全く同じものです。
スパイダーマン・クラシックス・ シリーズ1 (2001年)
B.J. Exclusives MONSTER MAYHEM (1998年) アニメイテッドのリペイント版です。
Marvel Mutations Man-Spider(1998年)
10インチはスパイダーマンシリーズからではなく、ケイビー限定のマーベルユニバースから発売されました。ボディはビーストのものを流用しているので腕は2本しかありません。
そして、日本オリジナルのマンスパイダー・フィギュアがこれです。タイムカプセルのガチャにマンスパイダーがまさかのエントリーでした。これが発売されたことによりマンスパイダーの知名度が一挙に上がりました。 Spider-Man Figure Collection TIME CAPSULE (2007年)
■補記2 アニメシリーズでのマンスパイダー
1994年よりフォックス・キッズで放送されたアニメシリーズにもマンスパイダーは登場していますが、上記コミックの内容とは全く違うものです。蜘蛛化したスパイダーマンはコナーズ博士に放射線治療で治してもらうようです。
「Duel of the Hunters」
(Neogenic Nightmare, Part 8; Episode 21)
1995年11月11日放送
■補記3 マンスパイダー番外編
『Marvel Fanfare』以前の『Amazing Spider-Man Annual #11』(1977年号)にも実はマンスパイダーと呼ばれるものが登場しています。「Spawn OF The Spider!!」という映画の中に出てくるキャラのようですが、後にその着ぐるみがギャングに盗まれて〝着ぐるみ〟マンスパイダーとスパイダーマンが戦うというシーンがあります。『Essential Amazing Spider-Man vol.8』に収録されている『Annual #11』より
この記事へのトラックバック